プロジェクトタイトル
責任ある観光者の養成に向けた教育旅行:北極圏都市ロヴァニエミでの実践
研究ユニット
代表者
メンバー
プロジェクト期間
2025年5月1日 ~ 2026年3月31日
プロジェクト概要
観光教育は、従来、競争力のある観光人材を生み出すための手段として捉えられてきたが、近年では観光現象に関連する多様なステークホルダーとの関係において、より責任ある観光客の育成にも重要な役割を担っている(山口ら、2022)。
本研究は、さまざまな形態で展開される教育旅行が、観光教育の実践にどのように取り入れられ、持続可能で責任ある観光市民の育成に貢献するのかを検討する。さらに、関係性を重視した教育アプローチ(Relational Pedagogical Approach)を活用し、観光教育の枠組みを広げて、より倫理的で思いやりのある観光実践を促すフィールドコースの可能性を探る。
まず、観光教育の意義に関する現在の議論を批判的に検討?分析し、「多元的(Pluriverse)」「主体化(Subjectification)」「価値観(Values)」「身体化(Embodiment)」の4 つのキーワードに関わる哲学的議論を検討しながら、理論的枠組みを構築する。
次に、前述の枠組みを基に、フィンランド北部のロヴァニエミ市でフィールドコースを開発する。ロヴァニエミ市は近年、オーバーツーリズムの課題に直面しており、観光客数が地元人口の10 倍を超えている。そのため、地域社会のニーズと観光産業の需要とのバランスを取るための貴重な洞察を得ることが期待される。コース開発にあたっては、ラップランド大学と連携し、観光業者、住民、行政関係者等、現地ステークホルダーの協力を得る。本フィールドコースは、2026 年度に和歌山大学観光学部の実践プログラムとして実施予定である。
このフィールドコースを通じ、学生が関与的で配慮に満ちた観光のあり方について省察し、実践する機会を提供することを目的としている。将来の観光産業に携わる者としてだけでなく、一人の観光者としても責任ある行動を取る姿勢を育むことを目指す。